【vol.21】この食い違いを見抜けるか。『模倣の殺意』。

-古本屋ATrACT-vol.21

模倣の殺意

作者:中町信
発表年:1973(2004 改訂)
出版:創元社

七月七日の午後七時、新進作家、坂井正夫が青酸カリによる服毒死を遂げた。遺書はなかったが、世を儚んでの自殺として処理された。坂井に編集雑務を頼んでいた医学書系の出版社に勤める中田秋子は、彼の部屋で偶然行きあわせた遠賀野律子の存在が気になり、独自に調査を始める。一方、ルポライターの津久見伸助は、同人誌仲間だった坂井の死を記事にするよう雑誌社から依頼され、調べを進める内に、坂井がようやくの思いで発表にこぎつけた受賞後第一作が、さる有名作家の短編の盗作である疑惑が持ち上がり、坂井と確執のあった編集者、柳沢邦夫を追及していく。

著者が絶対の自信を持って読者に仕掛ける超絶のトリック。

記念すべきデビュー長編の改稿決定版。

と、いうことでこの物語にはとんでもないトリックが仕組まれている。

二人の人物が別々に事件を追い、二人とも別々の容疑者を見つけ出す。

その容疑者二人にそれぞれ動機やアリバイ破りが用意されていて、そのどちらが犯人なのかを読者は推理するという形になる。

だが、丁寧に丁寧に読み進めていくと、どう考えても描写に食い違いが生じていくのだが…

それは計算しつくされた著者の罠。

終盤に物語は収束され、とんでもない顔を見せ始める。

もう、二人の容疑者のうちどちらが…!?とか言っている場合ではなくなる。

事件そのものを覆すその展開に、あなたはきっと驚愕する。

総評:63%

オススメ度:★★★☆☆