-古本屋ATrACT-漫画図鑑vol.101
屍鬼
ーー村は死によって包囲されている。
199X年、猛暑。周りから隔絶された集落・外場村。
人口わずか1300人のこの村で、原因不明の死が蔓延していた。
次々と増える死者を前に、村は恐怖に支配されていく。

医師・尾崎敏夫と寺の跡取り・室井静信は、伝染病を疑うことに。
一方、死亡した清水恵に思いを寄せられていた結城夏野は、
時折、死んだはずの彼女の視線を感じ、眠れぬ日々を過ごしていた。
そして、尾崎敏夫と結城夏野との接触により、
一連の失踪・死亡事件は吸血鬼「屍鬼」によるものであると判明する。
「屍鬼」への恐怖感
序盤は、得体のしれない死・「屍鬼」への恐怖感が物凄かった。
フジリューの、あの独特な絵柄がホラーな雰囲気にまさかのマッチ。

その不気味すぎる雰囲気、ゾッとしてしまった場面も多い。
「人間」への恐怖感
だが、この死の原因が「屍鬼」であると村人たちが認識してからは…
物語は「人間」への恐怖感に包まれていった。

憎しみや恨みをもって、次々と屍鬼を殺害していく村人たち。
恐怖を超越した狂気が村を支配していた。
「これは正義だ!!! ここにいるのは残虐な化け物であって慈悲の必要な子供などではない」
「誰もおれを責めないだろう!!!」
人間の残虐さが垣間見られた一幕だ。
この逆転の切り返しに本気でゾッとしてしまう。
フジリューらしさ、健在。
どんなに物語が重く苦しくホラーに支配されようとも、
奇才・フジリューのぶっ飛びセンスが枯れることはない。

…なんだこれ。最高である。
様々な場面で、フジリューのぶっ飛んだセンスが鋭く光る。鋭すぎた為に賛否両論はあろうが、およそ常人には思いつかない奇抜なスタイルで『屍鬼』の世界に深みを持たせることには成功した。
「屍鬼」対「人間」。その果てに待つものとは…
「生」と「死」に囚われた人間と屍鬼。彼らの争いは、最悪の形で終焉を迎えようとする。
その争いの果てに、安住の地はあるのだろうか…?
総評:89%
オススメ度:★★★★☆
タイトル:屍鬼
作者:藤崎竜,小野不由美
巻数:全11巻
発表年:2008~2011
掲載:ジャンプスクエア
出版:集英社