【vol.25】運命的な出会いと別れの中に、ゆるやかな癒しの時間が流れる6編のショート・ストーリー。『とかげ』

-古本屋ATrACT-小説図鑑vol.25

とかげ

作者:吉本ばなな
発表年:1996
出版:新潮社

私の衝動的なプロポーズに対して、長い沈黙の後とかげはこう言った。「秘密があるの」―。幼い頃遭遇したある事件がもとで、長い間目の見えなかったことのあるとかげ。そのとかげにどうしようもなく惹かれてゆく私。心に刻まれた痛みを抱えながら生きてきたカップルの再生の物語「とかげ」。運命的な出会いと別れの中に、ゆるやかな癒しの時間が流れる6編のショート・ストーリー。

「時間」と「癒し」、「宿命」と「運命」についての6つの短編集

自分を徹底的に客観視する。
そこから自分を許してあげられるということがあるのだなぁと思った。

 

「その瞬間、そのときの「私」にしか当てはまらなくて、ほかの人が聞いても陳腐だったり、ありふれていたり、そういう言葉。言ったほうの人は何の気なしできょとんとしてて、そのくせ本当の本当は、自分の言った言葉の力をどこか深いところで絶対に知っている。自分がどこか彼方の美しいところからそれを取ってきて差し出したことを感じている。」
『血と水』のとある一片。お気に入り。

 

どれも「ふたり」のお話なんだけど、

そのなかのどうしようもない「ひとり」の部分が深く描かれていた。

 

何気ない日々の中で感じる「癒し」とはなんなのか。

総評:61%
オススメ度:★★★☆☆